証明済みの関連領域(relevance zone)を正解データとして、KataGo の出力がそれを復元できるかを 8,385 局面で測った。当初の仮説「不確実性の帯 ≒ RZ」は乱択以下で反証された。 だが符号付き ownership は RZ を AUC 0.910 で復元する。 同じ盤面で、勝敗の判定は AUC 0.411——偶然を下回る。
1−|ownership| の top-m 一致率は 0.445(乱択 0.536)、AUC 0.357。
探索の分散 ownershipStdev も、着手ごとの ownership 分散 mo_var も
乱択以下。KataGo に最も有利な信号を与えた上での結果。
−ownership(白の勢力)は top-m 0.860 / AUC 0.910。
等方的な幾何ベースライン(白石までの距離、0.765 / 0.807)を明確に上回る。
RZ は「争点」ではなく「生死が問われている一団の潜在的勢力圏」だった。
深さ・材料を揃えた 2,042 局面(証明済み正例・負例が各 1,021)で AUC 0.411。 探索 10 倍でも 0.428、大型モデルでも 0.446。0.5 を超えない。
素材は JA 開局(B[dc];W[pass];B[de];W[df];B[ce])を単機で解いた
OFTS の証明木 756 MB。SGF の各ノードには RZ[勝ち手][RZone][負け手] が
hex ビットボードで、コメントに solver_status と NN の p/v が入っている。
木は W[ee] 配下に 99.87% が集中し、RZ サイズは深さと相関する。
一様抽出では 1 本の狭い部分木を 1 つの難度で測ることになるため、
(深さ帯)×(RZ サイズ帯)×(WIN/LOSS)の 40 セルから各 200 局面、
加えて希少な非 ee 部分木を全数取り、盤面と手番で重複を除いた。
win_hex は実在の子ノードの手と 10,000/10,000 で一致。
木のステータスは worker 台帳 .jobs と 19,882/20,000 で一致
(残り 35 件は「job=負け → 木=UNKNOWN」=黒が失敗した枝を木が採用しなかっただけ)。
座標変換は SGF→GTP、minizero ビット→ownership 索引、goboard の 3 経路が独立に同じ点を指す。
KataGo は killall-go を知らないので、まず等価変換を立てた。
killallgo.h の実装では黒が 2 子置いて白を全滅させれば黒勝ち、
白は 1 目でも生き残れば勝ち。面積計算で白の地を a とすると黒の差は
49 − 2a − komi なので、a=0 のときだけ黒勝ちになる条件は
47 < komi < 49。
komi = 48.5。
komi 48.5 は訓練分布外なので、通常の komi = 9.0 を対照として全局面で並走させた。
評価は全予測子で同一。49 点を並べ替え、上位 m 点(m = |RZ|)を取り、RZ との重なりを見る。 |S| = |RZ| なので precision = recall となり 1 数字で足りる。 同値はシード付き微小ノイズで崩し 5 回平均。閾値に依存しない確認として AUC も併記した。
| 予測子 | 内容 | top-m | vs 乱択 | AUC |
|---|
RZ は証明の依存集合であって争点ではない。取り除くと証明が壊れる点は、 所有が確定していても RZ に入る。実際に分解すると——
| 区分 | 点/局面 | 盤面比 |
|---|---|---|
| RZ かつ 石が置かれている | 10.7 | 22.4% |
| RZ かつ 空点で争点(|own|<0.8) | 5.8 | 12.1% |
| RZ かつ 空点で決着済み | 9.2 | 19.2% |
| RZ 外 | 22.2 | 46.4% |
争点はわずか 12.1%。逆向きに、不確実性の帯が RZ の部分集合になっているかも確かめたが——
| τ | バンドの大きさ | precision | recall |
|---|---|---|---|
| 0.2 | 2.2 | 0.501 | 0.044 |
| 0.4 | 4.8 | 0.498 | 0.092 |
| 0.6 | 8.2 | 0.491 | 0.157 |
| 0.8 | 14.4 | 0.483 | 0.270 |
| 0.9 | 21.6 | 0.478 | 0.401 |
precision は全ての τ で基準率 0.536 を下回る。 争点バンドは RZ の部分集合でないどころか、乱択より RZ に入りにくい。
2 例で見ると分かりやすい。RZ は白の一団を包むだけでなく右上隅まで伸びている—— 白が逃げ出せる余地が証明に効くからだ。等方的な距離ではその形に届かないが、 ownership はそれを捉える。
| 条件 | n | own_w | prox_w | unc | 乱択 |
|---|---|---|---|---|---|
| 主結果 · komi 48.5 · 1k visits · b18 | 8,385 | 0.860 / .910 | 0.765 / .807 | 0.445 / .357 | 0.536 |
| komi 9.0(通常の 7 路囲碁) | 8,385 | 0.851 / .900 | 0.765 / .807 | 0.491 / .420 | 0.536 |
| 10,000 visits | 1,049 | 0.846 / .899 | 0.762 / .802 | 0.453 / .366 | 0.538 |
| b28c512nbt(大型モデル) | 1,049 | 0.850 / .900 | 0.763 / .802 | 0.467 / .380 | 0.538 |
| GHI 条件付き証明を含む | 8,785 | 0.862 / .911 | 0.766 / .807 | 0.452 / .365 | 0.540 |
平均が外れ値に引きずられていないことも確かめた。own_w は
中央値 0.889、p10 0.706、46.2% の局面で 0.9 以上、0.5 以下は 1.5% のみ。
prox_w は中央値 0.771 で 0.9 以上はわずか 3.1%。
点単位のロジスティック回帰を、局面単位で train/test を分けて当てた(410,865 点)。 幾何ブロックは白石・黒石・全石までの距離と辺までの距離、 net ブロックは ownership・stdev・policy・mo_var。
| ブロック | test AUC | 差分 |
|---|---|---|
| 幾何のみ | 0.8400 | — |
| net のみ | 0.8347 | — |
| 幾何 + net | 0.8692 | +0.0292 |
単独 AUC は own が 0.161(反転して 0.839)で最強。d_white 0.775、
stdev 0.415、policy 0.434、mo_var 0.413。
net は幾何に上乗せする情報を確かに持っている。ただしそれは不確実性の形をしていない。
RZ の解析中に、komi 48.5 での勝敗一致率が 0.0% と出た。 これは証明木が 1 本の証明である以上そこに現れる局面が全て「黒勝ち」だからで、 負例のないテストセットでは「白が生きる方に偏っている」のか 「判別できない」のかを切り分けられない。
幸い worker 台帳には白が証明上生きる局面が 1,021 件ある(status −2)。 同数の黒勝ち局面と合わせ、深さ(21.3 vs 21.5 手)と白石数(9.6 vs 9.6)を揃えた 2,042 局面で判別能力を測った。
| 条件 | 正解率 | AUC(勝率) | AUC(白石の ownership) |
|---|---|---|---|
| komi 48.5 · 1,000 visits | 45.4% | 0.411 | 0.429 |
| komi 9.0 · 1,000 visits | 44.8% | 0.410 | 0.414 |
| komi 48.5 · 10,000 visits | 45.1% | 0.428 | 0.427 |
| komi 48.5 · b28c512nbt | 44.9% | 0.446 | 0.460 |
白石上の平均 ownership は、白が死ぬ局面で −0.924、白が生きる局面で −0.713。 KataGo は、白が実際には全滅する局面の方でこそ「白の石は生き残る」と強く確信している。 探索を 10 倍にしても大型モデルにしても 0.5 には届かない。
−ownership が勢力圏を指せば済む。一般の盤面で
「どの石の生死が争点か」を先に特定する問題は、ここでは扱っていない。RZ 探索を大盤へスケールさせるとき、NN 側から RZ を先読みする筋は 不確実性ではなく ownership を見ろということになる。 幾何に +0.029 AUC 上乗せするだけの情報は実際にあり、しかも その空間的内容は komi にも探索量にもモデル規模にも鈍感で安定している。
一方で勝敗判定は使い物にならないので、 「NN が難しいと言った部分木を厳密求解に回す」型のハイブリッドは、 少なくとも value を難易度指標に使う限り成立しない。 NN に割り当てるべき役割は領域の切り出しであって判定ではない。